突然だが、あなたは「ベトナム」についてどれだけ知っているだろうか。アオザイ、バインミー、フォー、ベトナム戦争……くらいは思いつく人が多いだろうが、「ベトナムで一番モテる髪型について知っている」という人は、ほとんどいないに違いない。
かくいう私も、まったく知らなかった。想像さえつかなかった。しかし先日、ベトナムを訪れた際に自らの頭部を使って確かめたところ……その髪型が判明したので報告しよう。ベトナムでモテたい男よ! Yo-Check!!
・バックパッカー街の理髪店
私が訪れたのは、ベトナム・ホーチミンのブイビエン通りにある理髪店。ブイビエン通りはバックパッカーが集うことで有名で、お世辞にもセレブ感が漂う場所ではない。しかしその分賑やかで、居心地のいい場所である。
私が目をつけた理髪店も、居心地が良さそうだった。しかも外観からは清潔感が漂っている。「この店ならいい感じの髪型にしてくれそう」という予感に誘われるがまま店内に入ると、スタッフの男性(中川家のお兄ちゃん似)が席に案内してくれた。
その席に座り、「この国で一番モテる髪型にしてください」ってことを英語とスマホでお兄ちゃんに伝える。スマホを使ったのは、英語がいまいち通じなかった部分をGoogle翻訳で補足したためだ。
なんとかして意思を伝えると、お兄ちゃんはニヤリとして「OK」のサイン。そのままお兄ちゃんは、私の首元にケープ的なものを巻き付けた。散髪スタートである。
・気持ちが晴れない理由
頭のサイドと後頭部の部分を、バリカンが冷ややかな感触を残しながら走っていく。気持ちいい。一気にバッサリいかれるのはいいもんだ。と思いながらも、私の気持ちは晴れない。なぜなら……
薄毛の分際で「この国で一番モテる髪型にしてください」なんて大それたことを言ってしまったからだ。これはもしかして……悪質クレーマーと同じことをしているのではないか。
死んだ金魚を板前さんに渡して、「これでうまい寿司を頼むよ」を言っているのと同じなのではないのか。「このティッシュペーパーに絵を描いてくれ」と画家に依頼するに等しいことをやっているのではないか。
そんな私の申し訳なさをよそに、お兄ちゃんは淡々を私の髪を切っていく。
──と、その時!
お兄ちゃんはカミソリを手に持ち……
私の頭に何かをやり始めたのである。
こ、これは……!
もしや……!!
EXILEのアレ!
EXILEのボーカルの人がやってた……
アレやんけ!
ってことは……
EXILEみたいになんの?
マジで!?
そっち方面行っとく?
そっち方面行っとくぅぅぅぅぅううう!?
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〜20分後〜
EXILE感なんて1ミリもないデブがそこにいた。たしかにカミソリでラインみたいなものはついているが、明らかにEXILEではなかった。残念……ではなかった。むしろ嬉しかった。お兄ちゃんが、薄毛のことを気にする素振りを一切見せなかったから。プロだった。腕だけでなく、お兄ちゃんは心意気もプロだった。
・お兄ちゃんと一緒に写真
私はそんなお兄ちゃんに感謝の意を示したくて、最後に握手をした。そして一緒に写真を撮ってもらった。お兄ちゃんの仕事を邪魔したら悪いので、1枚だけ撮ってお店から退散。店外で写真を確認すると……
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お兄ちゃんはガッツリ目をつぶっていた。お兄ちゃんは、笑いの面でもプロだったのだ。
[完]